「………き…」


「…え?ちょ、泣くな…」


「す……き…だよ…」




涙が流れる顔でにこっと笑って見せると、またさっきのように走り出した。
由里がいるはずの階段の前を通ったが、由里はいなかった。
待ちくたびれて先に帰ったのだろうか。

こんな事を思ったのは、この時ではない。
だけど、この時に気付くべきだったんだ。



雨が激しく降っている校庭を、傘もささずに走り続け、何度も何度も滑ってコケてドロだらけになって、また走り出す…



そしてまたコケてしまう。



「うあ…っ…もう…ヤダよっ…!由里……!!雅史君…っ」

溢れ出るのは由里と雅史への申し訳ない気持ちばかり、顔は涙と雨でぐしゃぐしゃになっている。



そこへ、考えもしない人が。
気配を感じ、そっと顔を上げる。






「……由里…!!?」