コトンッ
右肩が重くなった。
沙羅が寝ていた。
俺の肩で。
スースーと寝息をたてて。
さっきまで、あんなにはしゃいでたのに。
ってゆーか、まだ出発してから3分もたってないんですけど!?
「ね、寝るのはや!!」
つい、声を出してしまった。
すると、前の席から美優が顔を出した。
「沙羅ちゃん、昨日眠れなかったんだって。楽しみで。
ふふっ、笑っちゃうよね!」
と言って、微笑んだ。
「マジか!子供かよ、こいつは!」
俺も一緒になって笑った。
可愛いな。って思った。
side 沙羅
「……らちゃん」
誰かが呼んでる?
「…沙羅!」
「沙羅!!」
「ひ、ひゃい!!」
わたしは飛び起きた。
みんながわたしを覗き込んでて。
びっくりしたー…。
「やっと起きた!」
七海がため息をついた。
わたし、寝てたんだ!
「山下は起きたかー!」
せ、先生まで!
「沙羅待ちだよ」
美優が教えてくれた。
やばっ
「ご、ごめんなさい!
すぐ、準備します!!」
…………。
あれ?
荷物がない……。
「沙羅!荷物、持ってくぞー」
声の主は翔吾。
え!?
なんで!?
「ありがと!すぐ行くー!」
とりあえず返事をして七海と一緒に外へ出る。
「沙羅、翔吾の肩にもたれて寝てたんだよ?」
!?
「なんと、迷惑なことを………!」
重かっただろうなぁ。
あとで謝っとかなくちゃ。
それから、先生の話を聞いて6時まで鎌倉めぐり。
もちろん、班行動で。
「ほんとにごめんね。長い時間重かったよね、?」
わたしは、翔吾に謝った。
「あぁ、重かった重かった!お前チビのくせに体重だけはあるのな」
って意地悪く笑った。
わたしは、恥ずかしくなって。
「翔吾の意地悪!わたしは今、成長期なの!」
そしたら翔吾はにかって笑って、
「嘘だよ!よだれでてたけどなっ」
「やだ!ほんとごめん!汚いものを見せてしまって!!」
わー、!
よだれでてたんだ!
気分悪くならなかったかなー?
「それも冗談!そこかよ!謝るとこ!」
おもしれー!って笑う翔吾。
おかしいとこ…あった??
よく考えると、バスの中って翔吾とたくさんしゃべれるチャンスだったよね!?
寝てしまっただなんて…。
悔しいな。
気を取り直して、
鎌倉です!!
鎌倉は、京都の街並みと昭和の空気が混じり合ったみたいで。
周りにあるビルから孤立してるみたい。
「やっぱ、人多いーなぁ」
大輔がもっともなことを言う。
「そーだねー。修学旅行シーズンだからねー」
七海の言うとおり、そこらじゅうに制服の子達がいた。
中にはカップルの子達もいて。
恋してる女の子は、皆輝いていた。
「ね!七海!次はあのみたらし団子食べて見ない??」
班行動開始から20分ほどたっていた。
わたしと七海は買い食いばっかりで、美優はそんなわたしたちを見て呆れてたりしてた。
わたしの問いかけに応えてくれる声がしなくて。
呆れてくれる声もしなくて。
見てみると、
「美優!なんかおそろいのやつ、買うか?」
「うん!買おう! どれにする??」
「大輔ー!どら焼き半分こしよー!
ハイッ!」
「サンキュ!
俺らもなんか買う??」
「ほんとに!?買う買う!!」
「ヒューヒュー!!熱いねぇ君たち!」
……………。
皆、ラブラブしてる。
そして、翔吾はそんな七海たちをひやかしてる。
七海も、美優も、彼氏とも思い出作らないとダメだもんね。
わたしにばっかり付き合わせちゃった。
悪いことしたなぁ。
結局、わたしはちょっと寂しいなとか思いつつ、一人で買いに行った。
一応声かけたんだけど、聞こえてたよね?
「みたらし団子一本下さ〜い。…あ、やっぱり三本で。」
七海たちの分も買っといてあげよう。
美味しそうだしね。
気前の良い感じのおばちゃんからお釣りをもらって、見んなのもとへ戻る。
…………戻る……。
……あれ?
いない……………。
いるはずの斜め向かいのお土産屋さんには、誰もいなくて。
右も左も、他校生の子ばかりで。
もしかして……
もしかしなくても………
迷子………。
それから、30分、わたしは皆を探して歩き回った。
でも、見つからなくて。
どんどんひと気のない場所へと進んでる気がする。
さっきまで、騒がしかったのに。
辺りは静寂に包まれてて。
わたし一人だけが、孤立したみたいな。
そんな感覚にとらわれる。
心細くて。
周りには、誰もいなくて。
目に涙が溜まってくる。
もう、自分がどこにいるかもわからない。
怖かった。
「どうしたの??」
突然声をかけられて。
体が、ビクッとなる。
振り向くと、30代前半くらいの男の人。
スーツを来てる。
わたしは、一目見て、胡散臭いセールスマンみたいだなと思った。
「泣いてるの? 可愛いね。 今一人?」
この人は怖い。
直感的にそう思った。
「おじさんと一緒においで。良いところに連れてってあげる。」
そう言って、薄ら笑いを浮かべる。
「い、いいです」
差し伸べられた手を拒む。
「いいから、いいから」
今度は、強く手を引かれた。
「い、いや‼」
必死に抵抗したけど、やっぱり敵わなくて。
涙がこぼれた。
その時。