桜が満開に咲き誇る季節。

優しいそよ風がわたしを包む。

「沙羅ー!そろそろ時間よー!」

お母さんの声。

「はーい!」
わたし、山下 沙羅は、慌ててカバンをひっつかみ外に出る。

「行ってきます!」
見送りにきてくれるお母さんに笑顔をむける。

今日から新学期。そして、わたしは中学3年生になる。
クラス替えが気になって仕方がない。
上手くクラスに馴染めるかな?

そんなことを考えながら、友達との待ち合わせ場所まで自転車をこぐ。


待ち合わせ場所についてから15分経過。

「おはよー!」
明るい声に振り向く。
癖のあるショートヘア。
少し黒めの肌に大きな目。

「遅いっ」
わたしはため息をつく。
いつもの日常。

「あはっ☆すみませんでした。」

この子はわたしの友達の志方 七海。
すごくマイペースで、時間にルーズ。
わたしはいつも振り回される。

「はやく行こっ!始業式遅れる!」

その後、わたしたちは他愛のない話をしながら学校へ向かった。



「おはよー!」
学校に着くと、挨拶の声が飛び交う。


「はやくクラス替えの結果見に行こ!」

七海に引っ張られるようにしてそこへ向かう。

たくさん人だかりができていて、わたしたちはドキドキしながら結果を見た。

よかった!!
七海と一緒だ!!

一安心したわたしは、ほっと胸をなでおろした。
わたしたちは、お互い手をとりあって喜んだ。


「沙羅!七海!
離れちゃったなー!」

そう声をかけてきたのは、いつメンのわたしの大好きな4人だった。

声をかけてくれたのは、ソフトテニス部のキャプテンであり、しっかりしててお茶目な後藤 美香。

その横に、剣道部でハキハキしてて少しぬけてるところがある北本 ゆずか。

その後ろに二人。
頼れるお姉さんで姉御肌の古寺 真智。

それから、天然でふわふわしてる橋本
結城。

「そうだねー。残念ーー!」
わたしと七海は嘆いてみせる。


「はやく教室行けよー!!」
とりとめのない話をしていると、先生の大声が聞こえた。

「じゃ、また部活で!」
そう言ってわたしたちはそれぞれの教室へ向かった。


ここで、私の事を紹介しようと思う。

身長150センチ(自称)
浅黒い肌に大きくも小さくもない目。
これといってとくに何もない小さめの女の子。
性格は明るい方だと思う。

このくらいかな??



ドンッ

「きゃっ」

七海としゃべりながら廊下を歩いていたら、大きな背中にぶつかった。

「おぅ、わりぃ。ちっちゃくて見えなかった。」
そういってSっ気たっぷりで笑ったのは、長身で野球部の三村 翔吾。

「そこまでちっちゃくないもん!」
上を見上げて言い返す。

「ははっ、また一緒のクラスだな」

「え、そうなの!?」
さっき、わざとぶつかられたばかりなのについ、頬が緩んでしまう。


「沙羅ー。はやく行こーよー。」

はっ、七海の事忘れてたっ。

「うん!行こっか」

再びわたしたちは教室へ向かうため歩き出した。


三村 翔吾は、わたしが密かに想いをよせてるひと。

告白しようとかそんなんじゃない。

しゃべりかけてくれるだけで幸せな気分になる。

野球してる時の真剣な表情。

すこし、抜けてるところ。

Sなところ。


わたしは、翔吾の表情一つ一つが好きなんだ。






冬も終わりのある日の放課後。


部活が休みだった日。

わたしは社会のレポートに必要な資料を探しに図書室にきていた。

ゆずかは部活だし、美香は先生に呼ばれてるし、あとの三人は彼氏と帰っちゃったし。


そんなわけで、一人で図書室に訪れてたわたし。


「しまった……。」


わたしは、高くそびえる本棚を前に立ちつくした。


「届かない…」


わたしは、背が低いという事を忘れていた。
周りには誰も人がいない。


「どうしよう」

そこで、わたしはジャンプして取ることにした。


大丈夫。
ジャンプ力はあるほうだ。


そして、勢いよく床をけった。

届いた!!!

本の角をつかんだ瞬間。

勢いで、他の本もたくさん落ちてきて。


どうする事もできなくて。



わたしは、床に倒れこみ本の衝撃がくるのを待った。


……が、訪れる事はなくて。


「っぶねぇ。しっかりしろよ!」

翔吾だった。

床だと思ったのは、翔吾の腕の中で。
数センチ先には本が散らばってて。


翔吾が引っ張ってくれたんだ。