「私には、畏れ多いことでございます」

三度目の「畏れ多いこと(以下略)」が出れば引き下がるのが常なのに、本日のアナベラはどうやら本気らしく、しつこい。
 通行人の中に知った顔でもあれば穏便に立ち去れるものを、今日に限って見当たらない。

(困った、誰でもいい、私を助けて!)

 ――ドゴーーーーーンッ

 その時、轟音が鳴り響き、イヴは思わず肩を震わせた。
 飛び上がるほどに驚いて背後を見れば、背後の露店の軒先で、売り物のフルーツバスケットが煙を上げて焦げており、隣で店主が腰を抜かしている。