「あなたはいつも他のどの家のメイドよりも熱心に働いているわ。ねえ、イヴリン。あなた、うちのパーラーメイドにならない?」

 またこれだ。もう何度も同じ会話を繰り返したので、聞き飽きている。

「畏れ多いことでございます。先を急ぎますので、失礼いたします」

 そのまま立ち去ろうとするイヴの手首をアナベラがすかさず掴む。
滑るほどに紅く厚く塗られた唇を耳元に寄せられ、耳の端にかかったおくれ毛を指先でそっと払われ、鳥肌が立った。

「我が家なら、マッケンジーの家よりも、好待遇であなたをお迎えできるわよ」

 きつい薔薇の香水に鼻をやられ、熱い吐息を耳孔に吹き込まれ、泣きたくなる