「ドクター。ちょっと気になることがあるので、レイクロッジへでかけてくるよ。すぐに戻るからね」

 発作が治まれば、オスカーの集中力は驚くほどに長く続くのが常である。
 既にジュリウスの言葉も聞こえないらしく、顕微鏡を覗きこんだまま顔も上げない。
 この分ならば、次の発作は、四時間ほど先になるだろう。
 ジュリウスは目を瞑る。
 兄に、報告しなくてはならないことがある。
 
「では行ってきます」

 ジュリウスが目を閉じ、一秒も経たずに再び目を開けるとそこは彼の生まれ育ったノーサンプトンシャーの田舎屋敷(カントリーハウス)、レイクロッジであった。