ところで、つい先日、ドイツでコッホが結核菌を見つけた。
 病気の原因は菌であるという、『コッホの原則』は、十九世紀最大の発見である。
グレートブリテン島とアイルランドに挟まれた、総面積六百㎢にも満たない小さな島、ここ、マン・アイランドで、名もなき一人のイギリス人医師であるオスカーが、コッホの偉業に勝るとも劣らない研究成果を密かに挙げたことを、今はまだ誰も知らない。
 しかし、近々公の場で華々しくその功績を謳いあげられるであろう。
 誰もが彼を讃える未来はすぐそばまで迫っている。
 ジュリウスは、それを待ちわびている。
 その時がくればきっと、イヴは幸せになれる