「愛しいイヴリン。泣いてはいないか。つらくはないか。今すぐ蒸気船でアイリッシュ海を越えて、会いに行きたい、イヴリンっ。だが、私にはできない、できないんだっ。肉が憎い! 肉体など、脱ぎ捨てて飛び立ちたいっ!」

「なんだ、いつもの発作か。驚かせないでよ」

 質量を持たないジュリウスの体には、重力は働かないはずなのに、なぜか近頃地面へと吸い寄せられる気がして気分が悪い。
すぐさま上空へと浮上するジュリウスの腕にすがろうとして、オスカーの掌は空気を握る。

「お願いだ、ロード。ちょっと見てきて」