カズマがこんな風にチカの家を訪れる時は、決まっていつも厳しい仕事のただ中か、恋に破れた時なのだ。
新入社員の研修会以来、妙に気があって行動を共にするようになってから、もう十数年が過ぎている。
総合職を選んだチカにとって、カズマとはライバルであり、よき戦友でもあった。
その昔、チカの結婚を何より喜んでくれたのも、カズマであった。
部長からの、お声がかりで見合いをした。
「是非に」と請われた結婚だった。
「仕事を続ける」という条件で嫁ぎ、ほどなく、妊娠。
幸せになる筈だった。
しかし、赤ん坊は、腕に抱かれることなく天使になった。
七ヶ月に入ったばかりだった。
「女の子でした」
病院のベッドで麻酔からさめかけた時、
看護婦さんが無表情に告げていった。
死産は、ハードな仕事をつづけていた、私の所為だと、義母にも、夫にも責められた。
請われた結婚は、そうして破綻した。
離婚よりも、子どもがいなくなった空虚感で、私は荒れた。
そんな中、哀しみからすくいあげてくれたのが、カズマだった。
女友達の誰もが、チカの泣き言にうんざりし始めた時も、カズマだけは私から逃げなかった。
それは「慰めてくれる」とか、「話をじっくり聞いてくれた」とかではない。
『もっと大きな心配事で、私を振り回す』
という手法で・・・。
チカは、カズマの為にと、右往左往しているうちに、立ち直っていた。
新入社員の研修会以来、妙に気があって行動を共にするようになってから、もう十数年が過ぎている。
総合職を選んだチカにとって、カズマとはライバルであり、よき戦友でもあった。
その昔、チカの結婚を何より喜んでくれたのも、カズマであった。
部長からの、お声がかりで見合いをした。
「是非に」と請われた結婚だった。
「仕事を続ける」という条件で嫁ぎ、ほどなく、妊娠。
幸せになる筈だった。
しかし、赤ん坊は、腕に抱かれることなく天使になった。
七ヶ月に入ったばかりだった。
「女の子でした」
病院のベッドで麻酔からさめかけた時、
看護婦さんが無表情に告げていった。
死産は、ハードな仕事をつづけていた、私の所為だと、義母にも、夫にも責められた。
請われた結婚は、そうして破綻した。
離婚よりも、子どもがいなくなった空虚感で、私は荒れた。
そんな中、哀しみからすくいあげてくれたのが、カズマだった。
女友達の誰もが、チカの泣き言にうんざりし始めた時も、カズマだけは私から逃げなかった。
それは「慰めてくれる」とか、「話をじっくり聞いてくれた」とかではない。
『もっと大きな心配事で、私を振り回す』
という手法で・・・。
チカは、カズマの為にと、右往左往しているうちに、立ち直っていた。