「ねぇ、あれってさ・・・」

指をさしながら加代の方を見ると、加代の目がまたキラキラしている。

「加代・・・?」
「あれってさ、もしかして神崎君見にきてる人達!?だよね?だよね?私同じクラスで良かった!!しかも斜め後ろの席だし!!」

完全に興奮してる・・・
私が言葉を返す前に「教室入ろ!」と言って加代は走っていってしまった。

「え〜・・・」

入り口まで人で塞がっているのに加代ったら無理矢理・・・
考えただけでも体が疲れてきそう。
そこで素早く回れ右をして、私はとりあえずトイレに行くことにした。
とてもじゃないけど、あんな人だかり掻き分けていけない。
あと少しすれば授業も始まるし、そしたら流石に人もいなくなるはず。
にしても、アイドル並みの大人気。
カッコイイけど・・・あそこまでなる?
やっぱり理解できない。

そして次の瞬間、私は神崎君の凄さを改めて目の当たりにした。
普段はあまり待つことのないトイレが混んでいるのだ。
洗面台でお化粧を直しながら神崎君の話をする沢山の女の子。
きっと洗面台が使えない子がトイレにこもったりしているに違いない。
5つある個室は全て満室状態。

「嘘でしょ・・・」

ただでさえ人ごみが苦手な私はすぐにトイレを出て二階へ向かった。
勿論、二階のトイレに。
階段を上がってすぐの場所にあるんだけれど、二年生の階だから少し緊張。

一階みたいに混んでたらどうしよ・・・
恐る恐る戸を押すと、嬉しいことに二階はガラガラに空いている。
天国と地獄みたいだと思った。
しかし喜ぶのも束の間、校内に始業のチャイムが響き始める。

えぇ!?
ついてないなぁ・・・
でも少しくらいなら遅れても大丈夫なはず!
次の授業の英語の山本先生は優しいと生徒から評判がいいからだ。