入学式にもいなかったし、どんな人か一度だけでも見てみたい。
唯一、名前だけは名簿をみて知っている。
神崎一歩
かんざきいっぽ
名前からして変わっている。
もともと登校拒否とか?
めちゃくちゃ不良とか?
頭の中で想像だけが一人歩きをする。
『神崎ー!神崎は今日も休みかー?』
出欠をとる先生が毎回名前を呼ぶってことは学校にも連絡をしていないらしい。
いわゆる無断欠席だ。
「名前呼ばれてるから学校は辞めてないみたいだね」
まだ悔しがっている加代に呟いた。
「辞める前に一回でも来てほしーな」
独り言のような加代の言葉に、私は黙って頷いた。
そして出欠がとり終わる頃、私と加代の願いが突如叶った。
教室の後ろの戸がガラガラと音を立てたかと思うと、そこには見たことのない男子が立っていた。
背が高く、栗色の髪をした綺麗な顔の男の子。
「まさか・・・!」
加代の興奮する声。
私は黙って息をのんでいた。
教室中がざわめきだす。
『神崎だな?』
先生が教壇から男の子に向かって問うと教室は静まり、彼が黙って頷くと、またざわめいた。
「ねえ、凄いかっこよくない!?」
加代が背中を叩いてくる。
「そう・・・だね」
予想とは全く違う現実の神崎君を見た私は、しばらく彼から目が離せないでいた。