貴方に夢を。私に心を。


「あら、私の事信じてなかったの?」



悪戯っ子の様にクスリッと笑うレーちゃん。



でも、そんな事でハマるほど正直者じゃない。



「えー?信じてるよぉ。ひどいなぁ。」



ぷっくりと頬を膨らませる。



いつもの可愛い僕は不満そうな顔を作る。



「レーちゃんこそ、僕を信じてないんじゃないのぉ?」



「そんな事ないわよ?」



そう言って楽しそうにクスクスと笑った。



でも、その瞳は全く笑っていなかったんだ。



どこまでも真っ黒な瞳はひどく悲鳴をあげていたことに僕らは気づかなかったよ。

こうして、僕らは偽りの“仲間”になった。



心の奥に本心を隠して。




きっと、彼女は知っていた。



僕らの本音を。



だから、保険として君も僕らと同じ態度をとったんでしょ?



いつか、僕らが罪悪感を持つことが無いように。



優しい君は僕らと距離を置いた。



自分のために。



僕らのために。



偽りの“仲間”は本物の“仲間”とは違う。



この日、口にした「信じてる」は滑稽なくらい冷たい音がした。










そして、知るんだ。



自分の愚かさを。



その時はいつ?






〜柚side〜

き、きついよー!



どれだけやっても終わる気がしない!



………ニ週間前に遡る………



いつもと同じ様に皆でレイちゃんが準備してくれたお茶菓子を食べていた。



生徒会室で楽しくおしゃべり♪



でも、急にレイちゃんが言ったんだ。



「あ、二ヶ月後に学年別親睦会があるから書類に目を通しておいてちょうだいね。」



会長のための机を指さしながら、一口紅茶を啜るレイちゃん。


で、机の上を何気無く見るとそこには…




目を逸らしたくなるほどの書類の山。



え?



ナニコレ?



もしかして、これ全部?



おかしくない?



ま、まあ、でもこの位だったら終わる…かな?



「ああ、あと。仕事はそれ以外にもまだあるそうよ。」



まるで私の心を読んだようなタイミングでさらりと衝撃的なことを言ったレイちゃん。



「「…………………えぇーーーー!」」



私とハルくんの悲鳴がそこら中に響き渡った。




ーーーー・・・・・


と言う事があってからというもの仕事があれよこれよという間に溜まる溜まる。



連日、生徒会室に張り付け状態。



まあ、レイちゃんが1番忙しいんだろうけど。



疲れた…。



で、今はクラスをまわって希望を集めて来たところ。



レイちゃん以外の皆で手分けして行ってるから少ないんだけど、学校が広いから疲れる!



もう、嫌っ‼︎



早く戻ってレイちゃんに褒めてもらお〜♪



そう思ってバンッと生徒会室のドアを開けると…


「………な…い…?」



そこにあったはずの資料が消えていた。



終わったものもこれからやるものも全部全部。



何で?



「ああ、疲れた。」



「学校広過ぎだよぉ。」



「これから、また資料と格闘だっつーの!」



皆の足音と声。




「あ!柚ちゃん!中入んないのぉ?」



ハルくんが走って私に飛び付くけど、次の瞬間ピタッと止まった。



「…なくなってる?」



「何がだよ〜。」



ユキトくんもダルダルとこちらに歩いてくる。


「資料だよ!全部なくなってる…!」



「ハア⁉︎」



ライトくんはそう言って中に入っていろんなところを探している。



私も中に入って、探すけど一向に見つからない。



…あ!



レイちゃんだったら、知ってるかも!



ずっとこの部屋にいた訳だし!



急いで会長専用の部屋に行く。



「レイちゃーん!」




そう叫びながら、勢いよくドアを開くと目をパチクリとしたレイちゃんがいて、ちょっと勢いが良過ぎたかな?と少し反省する。


でも、すぐに笑いかけてくれる。



「早かったわね。柚。」



優しく労ってくれた。



嬉しいなー!



って、そんな場合じゃなーい‼︎



「ね、ねえ!レイちゃん、資料知らない??」



「え?」



「だから、親睦会の資料!」



キョトンとする顔を見て知らないらしいと肩を落とす。



その時、



「ねえ、本当の事、言ったら?」



後ろからアオイくんの声が聞こえた。



「…え?」



「だって、おかしいでしょ?」



…何が?