どうしようかしら?
………。
「部屋は船と一緒でいいわね。」
葵と雪夜に鍵を渡す。
「えぇー!」
言った途端、春が悲痛そうな声をあげた。
船では、よっぽど大変だったらしい……。
雪夜と雷翔がわざとらしくめんどくさそうに顔を顰めた。
「また、チビと一緒かよ。」
「場所取るなよ〜。」
「なっ!場所取ってたのはライくんとユキくんだけだからねぇ⁉︎」
春、ご愁傷様。
「とりあえず、部屋に荷物置いて着ましょう?」
「ちょっ!レーちゃん!部屋変えてよぉ‼︎」
「これから、夕飯でしょ?」
「え⁉︎スルー⁉︎スルーなのぉ⁉︎」
葵に聞かれて、頷く。
「ええ。部屋は隣だと思うから着替えたら、部屋の前集合にしましょう。」
「りょ〜かい〜。」
「ん。分かった。」
「僕は良くないってばぁ!お願いだから、誰か話聞いて!」
葵と雪夜の返事を聞いて、荷物を持つ。
「じゃあ、早く行こーよ!」
柚が楽しそうにニコニコ笑う。
「そうね。」
可愛くて、緩む頬で答えた。
エレベーターに向かって歩き始める。
私達が話していた所には
「無視しないでよぉー!」
春の叫び声が響いた。
「黙れねぇのかよ。チビ。」
「春ちゃ〜ん、静かにしましょうね〜。」
「ハルくん!静かにしないとダメだよ?」
「黙ろっか?」
「………黙れ。」
「春。その口、縫い付けてあげましょうか?」
「ごめんなさいぃー!」
〜麗華side〜
「雷翔、春、野菜食べなよ。」
「だとよ。お前に肉は100年はぇーよ。」
「野菜なんて無くても生きていけるしぃー。」
今は夕食の最中。
バイキング形式で皆、自分の好きな物を取って行く。
雷翔と春のお皿を見るとお肉が山盛りに。
お肉意外、食べられないの?
見かねた葵の注意に、雷翔と春が口喧嘩を始めた。
………ねえ、葵を放っておいていいのかしら?
「あぁ?てめら、話も聞けねぇ程耳が腐ったのか?なんなら、野菜丸ごと生で口に突っ込んでやろうか?」
ほら、キレちゃったじゃない……。
しかも、柚も怯えてる。
「いや悪いのは、どう考えてもこのクソチビだけだろ。」
「違うよぉ。僕はライくんに合わせてるだけだしぃ。」
ああ、まためんどくさいことを。
「そんなに肉が食いたいならちょっと、待っててくれる?」
でも、葵が発した言葉は思ってたよりも優しかった。
ニッコリと穏やかに微笑みながら続ける。
「これから、ナイフ持ってきてあげるから。そしたら、2匹の煩い肉を切り刻んでやる。」
前言撤回。
ものすごくイラついてたのね……。
「葵、もうやめてあげて?柚が怖がってるわ。」
そう声を掛けると葵は柚をチラリと見ると溜息をついた。
春と雷翔が嬉しそうにこちらを見てくるけど無視。
「この2人には、お肉料理は食べさせないから。」
パチンと指を鳴らすと1人のウエイターが近づいてきた。
「この2人にお肉料理を食べさせないようにしてくれない?」
そのウエイターは少し顔を赤らめるとかしこまりましたと返事をして、2人からお皿を取り上げる。
「おい!返せよ‼︎」
「ライくん、ムリに返してもらわなくても大丈夫だよぉ。だって、また……。」
また、取ることが出来ないようにウエイターが料理皿の前に立った。
それを見て、2人の顔が一気に沈んだ。
「一応、言っておくけれど。貴方達が何を言っても聞いてくれないわよ。」
葵を見ると満足気に笑っている。
……ちょっと怖いわよ。
「ここは富田コーポレーションのホテルだから、私の方が優先順位が高いから。」
それだけ、言って柚と2人で席に座って料理を味わった。
「んー、美味しいー!」
幸せそうに柚がほっぺたに手を添える。
「本当ね。」
さすが、洋平と幸平。
と、そこに他の5人も来る。
3人はいつも通りの顔をしてるけど……。
「雷翔、春、その顔やめてくれない?」
悲しそうな顔をして、お皿を見ている2人。
もう反論する気力もないのか、無表情になってしまった。
別にいいけど……。
「明日は海よね?」
質問というより確認。
「うん、そうだよ。1日海にいなきゃ。」
そう、明日は1日海にいることが決められている。
「…………めんど。」
啓と同意見。
本当、めんどくさい。