奏story
いつもと何も変わらへん駅。…だったはず。
いきなり強い風が吹いたおもたら、乱れた髪を手櫛で直す女がおった。
ベンチに座っとるんやけど、そこは俺の特等席やねんなぁ。
はよぅどいてくれへん――
そのとき、時がとまった。
目の前におったんは、ちっこい姫さん(笑)
小顔で、透き通るような白い肌。目もおっきいて、一言で言えば、可愛ぇ。
ホンマ姫さんちゃうかって思うたくらい。
「今日は風強いな――「そうやね。」…は?」
つい言葉が出た。しかもこの口調やで?絶対引かれとるわ…。
姫さんは勢いよく振り返る。そのまま一時停止。
近くで見ると、ほんま可愛ぇ。このまま持って帰ろか。(半分本気)
「どないしたん?」
ずっと一時停止しとった姫さんはわれにかえり、慌て始めた。可愛ぇな。
「え!?…っと、」
声、可愛ぇやん。次はなんてしゃべってくれるんやろ?
「目、見えてるんですか?」
・・・・・。何この子。俺の周りにおる女よりもおもろいやん。
「クスッ見えとるよ?」
「っあ!私、加藤鈴!カトウリン!貴方は?」
鈴チャン…。やっと目、見てくれたやん。
姫さんは、『鈴』という名前で、今、俺の前で赤くなっとって、すごく愛しい。
やばいわぁ。これ、俗に言う『一目惚れ』とちゃう?
出会って10分で依存症?俺ってこんな男やったっけ?
鈴チャンの前やから、こんな男になるんやね。
絶対に、さらいに行くから、それまで待っといてな?
―――――――鈴。