「西園寺さん………ありがとうございます。
どうか、これからも唯那のことをどうかよろしくお願いします。」


「はい……………」


話が終わると俺は神谷と玄関に向かう。


「あ、西園寺さん少しお待ちいただいてもよろしいですか?」


「はい」


お母さんは軽く頭を下げると二階へ上がる。
そして、一冊の本を持ってきて俺に渡した。


「あの、これは……………」



その本は見るからに古いもので、表紙には”diary”と記されていた。



「これは唯那が記憶を無くす前に書いていた日記です。
この中にはあなたへの気持ちが綴られています。
私は唯那が思い出さないように、ずっとこれを隠し続けていました。
でも、もうそんな必要はない。
…………あの子の本当の気持ちをあなたに見てほしい。
あの子がどんなにあなたを想っていたか、あなたにはそれを見る権利があると思うの。
ですからあなたが持っていてください。」


「はい、ありがとうございます。」


俺は最後に頭を下げると、車に乗り込んだ。