「あの、一つお聞きしてもいいですか。」


「はい、何でしょう。」


「どうして、俺に唯那を預けてくれたんですか?」


お父さんのことを思い出してほしくないはずのお母さんが、私に唯那を預けることを認めてくれたことに少し違和感を覚えた俺は、率直に聞いてみた。


「あなたがあまりにも必死だったから………」


そう言うお母さんの顔は、どこか安心したような顔をしていた。


「………………え?」


「あなたの話を聞いて、あなたが唯那のことを探してくれたと知って唯那を預けることを決めたのよ。
正直、最初に西園寺家の名前を出された時に、苦労も知らないお坊ちゃまに大事な娘を預けるなんて絶対に嫌だって思ったわ。
でも、話してるうちにあなたが12年も長い間あの子を思ってくれたことを知って本当に嬉しかったの。」