唯那のお父さんが企業したのは、唯那が生まれた頃のことだったの。
元々、企業するのはお父さんが学生の頃からの夢で、やっと夢が叶ったと思ったわ。


最初は小さい会社だったんだけど、少しずつ成長していって社員100人を抱える会社まで成長したの。


その頃は、生活もかなり豊かになって唯那を憧れだった鵬龍学園の幼稚舎に通わせることが出来たの。


でもね、唯那が5歳の頃に重要取引先の倒産のあおりを受けて倒産してしまって………


本当ならそこで路頭に迷う所だったんだけど、会社を経営してるお父さんの親友が、昔企業する時に手伝ったことを覚えてくれててね、その恩返しに借金の肩代わりと働き場所を用意してくれたの。


だから、倒産が分かって次の日には家を出て、この家に引っ越してきたの。


急なことだったから、唯那が寝ている間に茨城に来て目を覚ました唯那はとても驚いていたけど、泣かなかったの。


きっと、私たちを見て我が儘を言ったらいけないと思ったのね。
唯那は東京に帰りたいと言ったことはなかったわ。


でもね、あなたからもらったあの指輪は本当に大切にしていたの。
それは遠くから見てても分かったわ。
あなたのことを本当に好きだったのね。


いつか、あなたが迎えに来てくれるって信じて疑わなかったの。