家に到着すると、唯那はすぐに部屋に連れて行かれて医者が治療に入る。


「なぁ、神谷ちょっといいか。」


俺は一段落した所で神谷を呼び止めた。


「はい。何でしょうか。」


あまり人には聞こえてほしくない話だったので神谷を自分の部屋に入れる。


「実はな、この劇をきっかけに唯那の記憶が戻ったんだ。」


「…………さようでございましたか。
それは本当に喜ばしいことにございます。」


「あぁ。だが、俺の記憶と同時に辛い記憶も思い出してしまったらしく今はかなり精神状態が悪いんだ。
そのことについてなのかは分からないが、唯那の母親が俺に唯那を預ける時に言った言葉が気になるんだ。」


『……もし、唯那が辛い過去に向き合うようになったら守ってほしい。』


俺は唯那のあの姿を見てから、その言葉が頭に引っかかって仕方なかった。


「では、今から唯那様の母親に会いに行かれたらいかがでしょう。
唯那様のことを誰よりご存知なのは唯那様の母親でございます。
今日は金曜日ですし、ちょうど仕事がお休みだと聞いております。」


「………わかった。」


俺は私服に着替えると、神谷と一緒に唯那の実家がある茨城県に向かった。