それに、不安なのか俺の服の袖を掴んで離さなかった。


「今は何も考えるな。
それに俺が傍にいてやるから、安心しろ。」


そう言って俺は唯那の小さい体を思いっきり抱き締めた。


すると唯那は安心したのか、ゆっくりと目を閉じた。


それからあまり時間が経たないうちに、神谷が到着した。


「龍我様、大丈夫ですか?」


神谷は血相を変えて俺の元に走ってくる。


「俺じゃない。唯那がガラスの破片を踏んだみたいで足が血だらけだ。医者は呼んだか?」


「はい、もちろんでございます。
車はここまで入れなかったので、この先に止めてあります。」


俺は立ち上がると寝ている唯那を抱き抱えた。


「龍我様、私が唯那様を………」


「悪いが、自分以外の人間に唯那を預けることは出来ない。」


例え執事であっても、俺は他の奴に唯那を抱き抱えてほしくなかった。


「かしこまりました…………では、案内致します。」