「あっ、佐藤先輩。」

渡り廊下を歩いていると少し離れた水飲み場でペットボトルに水を入れている先輩が見えた。
あまり話したことはなかったが少し前に各学年の学祭委員を集めた会で同じ班だった。

「先輩、お久しぶりです。」

「えっ…あっうん。あの誰だっけ?」

「学祭委員会のとき同じ班だった河島です。」

「あっそうか。あのごめん今急いでるから…。」

「あっじゃあ私も手伝いますよ」

「いや、いいよ。」

「遠慮しないで下さい。お互い様じゃないですか。」

「本当にいいよ。」

「いや、でも運ぶの大変そうだし…。」

「マジでいいから。おせっかいなんだよ。」

そういうと走り去ってしまった。余計なお世話
だったかなと少し反省した。

数日後、また同じ場所で先輩と会った。こない
だのこと謝っておこう。そう思った。

「先輩!」

「あっ。」

こないだはと謝ろうとしたとき

「こないだはごめん。俺、酷いこと言った。助
けてくれようとしたのに…。」

「いえ。私もおせっかいだったなって反省しま
した。」

「そんなことない。俺、バスケ部で補欠なんだ
。水くみばっか。」

何も言えずに黙っていると沈黙に耐えられなか
ったのだろう。彼は、ふっと笑って立ち去ろう
とした。すれ違うとき消え入りそうな声が耳もとで聞こえた。

「好きな奴に情けないとこ見せたくなかった。これが理由。ごめんな。」