「ちょっと、二人とも…言い合いはやめてよ。そろそろ五時限目、始まっちゃうよ?」

「「はーい」」

ふぅ…何とかこの状況は逃れることができた。

ガラガラ…

「HR始めるぞ〜。席につけー」

そうだ…HRだったんだ。めんどくさい。

「…めんどくさ…」

思わずそうつぶやいた。

「へぇ〜。井上もそんなこと、言うんだ?」

驚いて隣を振り向くと、そこにはさっきまで加那葉と言い合いをしていた竹渕葵がいた。そういえば、こいつと隣だったんだっけ…ますますだるくなってきた。

「悪い?だって本当にめんどくさいんだもの。」

「ええ?!別に俺、悪い意味で言ったわけじゃ…」

「用がないなら話しかけないで。ただでさえ話すこと、苦手なんだから…」

「マジで?!話すの苦手なんだ!そしたらセンパイに近づけないじゃん。」

「なっ……!?!別に近づこうとなんてしてないっ!」

思い切り机を叩きつけてしまった。すると、一斉にクラス全員の視線が私に一気に被せられた。

「どうした?井上。答え分かったのか?」

「い、いえ…!何でもあり…ません…」

恥ずかしい。人生で一番恥ずかしい思いをした。全部竹渕のせいだ。許すまじ…

そんな恨みの思いを込めて竹渕を睨みつけていると、その圧迫に気づいたのか、慌てて「ごめん!」と、わけのわからんジェスチャーをしてきた。