「知ってるよ」

「何でも?」

「ああ、俺様は何だって知ってる」

「お、し、え、て」

「何をかな?」
宮下が私のひざに手を置き撫で回し始めた。
鳥肌もいいとこ、こいつぶん殴りたいわ。

「バックヤードユニオンが私怖いの」

「大丈夫だ。俺のそばにいれば何も怖くない」

「どうして?」

「それはいえないけどな」

「先輩、くちびるが渇いてきちゃった」

「こっちにおいで」

「バックヤードユニオンのこと教えてくれたら行きます」

「バックヤードユニオンは風紀委員とかいってるが、奴らは食わせもんよ。ある日藤田と土屋が話してるのを聞いたんだ。『若松のやつ、学年バッチを落としやがった』という藤田に『ちっ。これだから他人に仕事を任せるのは嫌なんだ』と土屋がいっていたんだよ。だから、万が一バックヤードユニオンが俺に危害を加えるなら、これが武器になるのさ」

「せんぱいすごーい!」

「だろ?おい、これは秘密だぜ。誰にもいってないことなんだ。じゃお約束だな」
宮下が顔を近づけてきた。鼻毛が三本飛び出し、歯には海苔がついている。




パシ!




私は宮下を引っ叩いた。



「先輩あざーす!」


私は宮下の腕を振り払うと部屋を飛び出した。