とはいえ、いつまでもごまかしてはいられない。


ついに茜は部室にやってきた。


「そろそろ教えてくれる?」

茜の目はマジだった。


もう無理だこれ以上は引き伸ばせない。

「あのね……。好きな人がいるみたい」
私は人生で一番大きな嘘をつこうとしている。


「え?どんな人?」

「先輩みたい」

「誰?」

「それは聞き出せなかった」

「そっか、そうだよね。一人くらい好きな人いるよね」
茜はうつむいた。


茜も諦め、私も諦めればすべてうまくいく。
この苦しみはどこから来るのだろう。
断腸の思いとはこのことか。


「私は諦めない」
茜はいった。

「え?」

「振り向かせてみせる」

「そ、そう。でもほら、他にもかっこいい人いるじゃん。ね!」


「他の人じゃダメなんだよ。映美は人を好きになったことある?」