「なぁ。咲田。腹減れねぇか?
飯食ってくるか? 」
先生がニヤリと笑いながら提案した。
「 いいですよ。どこ行きますか?」
鮫斑先生は情報誌をパラパラ見始めた
「 お。この定食屋いくねぇか?
どうだ? 」
先生は笑っていた。
いつもはニヤリとしか笑わない先生が。
私も…。
私も笑わなきゃ。
「 おー!そこ、いったことないです。
行きましょう!楽しみです。 」
「よぉし。じゃあ決定だぜ。
俺の車に乗りなさい。 」
駐車場へ向かう時、私は痛い足を
引きずりながら歩いた。
先生が気にしてくれていた。
先生の車は黒くてセルシオ…という名前の車だ。
私は後ろの席に乗る。
ふと、トランクをみると、そこには
薄汚いチャイルドシートが乗っていた。
「 先生。子供いたんだ。 」
先生は運転しながら答えた。
「おぅ。いるぞ。
22歳の娘と20歳の息子が。 」
「 え。先生何歳?」
「 今年で48だ。」
「 奥さんは?」
「 42だ。俺の昔の教え子だぞ。」
「 へー。でもこのチャイルドシート
なんか15年以上使われていないとは思えないんだけど。」
赤信号になったからか、
シーンとしていた。