「 俺、ハーフなんだ。日本人とアメリカ人の。でも、母さんは今の母さんじゃないんだ。」



「 え? 」


どういうこと…?
菜乃花さんはじゅんのお母さんじゃない…?



確か、2人は仲が良かった…

それなのに…?



「俺は、父さんと前妻の日本人との子供。んで、妹は後妻の子供ってこと。 」




そう、だったんだ…

兄妹あんなに仲良かったのに…。





「なぁ、鮎川。俺、あんまよくわかんねぇけどさ。じゃあ、鮎川の本当のお母さんはどこにいるんだ? 」





仁くん…。
私の聞きたいことを聞いてくれた。

私ら聞けないもん…悲しい答えが返ってくるのが嫌だから。



「 死んだよ。 」





あぁ…やっぱり悲しい答えだった。





「 俺が3歳のとき、
電車にはねられた


その原因なんだと思う? 」



じゅんの声がすーっと頭の中に入っていく。


悲しい…悲しい声。


か弱い声。



私も仁くんも答えられなかった。




「 俺を…俺を守るために死んだんだ。俺が路線に飛び込んじまって、そんな俺を守るために…。こんな俺をっ…。」




机に出した拳を強く握りしめ、震わせている


今、じゅんが何を思っているか、私には知る由もない。



けど、彼を守ってあげなきゃいけない、そう思った。