「仁くん…
夢は、仁くんのことが好きなのよ。
だから、夢のずっと隣にいて欲しいわ」
それができたら、きっと
俺は今、夢のことを抱きしめている。
できないから、悔しい。
手を握り、頬をなでることしかできない。
夢のその唇に触れられたら…
でも、俺はできないんだ。
それができるのは、あいつだけ。
カーテンが開く音がする。
ガララララララ……
その音と共に顔を出す、夢の彼。
鮎川…っ!!
「 どこいってた」
俺が冷たくいい放つと、あいつは俺のことを睨む。
「 バイトだけど?」
「 ふざけんな鮎川!
夢がこんなに苦しんでるのに…?
お前それでも彼氏かよ。」
鮎川の首もとを掴んで…握りしめた拳を降り落そうとしたとき─────
「 あゆかわ…?」
夢のお母さんが反応したんだ。
夢のお母さんが振り返ったとき
あいつははにかんで
「 久しぶり、おばさん。 」
そう言ったのが、忘れられない。