私たちは寝ないで過ごした。
いつまでも電気が消えることのない明るい夜。
笑顔の絶えない夜。
明日からは厳しい抗がん剤治療。
だから、最後くらいいいよね?
寝ないで過ごしても…。
恋バナして、盛り上がった。
笑い疲れた朝の五時前。
2人で日の出をみたんだ。
なるの部屋の広いベランダ。
オレンジ色が光っている。
空は濃い青色。
”美しい”素直にそう思った。
日の出は、何かの始まりに見えた。
日の出は何もない小さなところで起こっている。
でも、その美しさに私たちは目を輝かせた。
暑い夏の始まり。
「明日から、がんばれ」
そう、誰かが私の耳元で囁いた気がした。