私はずっと鮎川くんの腕のなか。
鮎川くんはゆっくり斜面を降りる
一つ一つ踏みしめるような
重い。重い。足取り。
急に止まったから、私は驚いて、横を向いた。
そこには仁の顔だった。
「 仁っ!来てくれたの?」
私は鮎川くんの腕の中で
一人感激した。
でも、仁はそんな雰囲気じゃなかった。
「…鮎川っ!夢になにしてんだよ。
夢は俺の女だから。」
”おれのおんな”
この言葉が頭から離れない。
仁がそんな言葉を言ってくれた。
仁、そんな言葉言わせてごめん。
本当は言いたくなかったよね。
ごめんなさい。
仁は鮎川くんを強く睨んでて
私のしらない仁の顔だった。
クールな顔。
穏やかだけど照れたときの可愛い顔。
毎日の変わらない笑顔。
愛おしい寝顔。
今までみてきたそれとは違う、
嫉妬した時の怒った顔。