仁が病室から出て行く。

私は堪えることなんて出来ない涙を拭う。




馬鹿だな…私。


自分から別れを告げたのにね。




本当は仁のこと嫌いにならなきゃ駄目なのにね。




仁が散らした色鮮やかなビーズ。



指輪…だよね?



私に、指輪作ってくれたんだね。




嬉しいよ…






仁はいつも優しかったね。




そんな仁が大好きだよ。




今もまだ、好きだよ。



恋って、儚いよね…。




私は、空も儚いって思うんだ。






全く同じ空はないでしょ?





同じように見えて、全部違うんだ。





地平線も、水平線も違う。





雲も同じように見えて一つ一つ違うんだ。





私はね、空を儚空って読んでるんだ。





儚空…。




今日みた空、またやってくることがないようにね…。






こんな涙でぐしゃぐしゃな顔、見られたくないよ…。




だから、今日のこの夕焼け空だけはこの涙を見ていててね。




儚空、知っていて。
私の仁を思うこの心を。