「姫さん。こいつに乗れるか?
俺も一緒に乗るから、安心していい。
馬に乗ったことは?」
馬に乗ったのは、小さい頃牧場の乗馬体験で
少しだけ乗った程度。
この時代の馬になんか乗ったことはない。
芳さんが連れてきた馬を見て、
乗れるかしらと不安になった。
「小さい頃、一度だけ乗ったことがあるけれど、不安」
「なに、姫さんはただちょこんと乗っかっていてくれるだけでいい。
落ちたりはしないさ。さあ、乗るぞ」
先に芳さんが馬に乗り、続いてあたしが乗る。
芳さんはあたしに手を貸してくれて、
意外とすんなり乗れた。
馬の乗り心地は意外としっかりしていてよかった。
こうして揺られているとなんだか眠くなりそう。
でも、うとうと出来なかったのはきっと、
さっきの恐怖心と、自分の気持ちに気付いてしまったから。
「姫さん。アンタぁ、暁斉を好いてしまったなぁ」
「えっ……?」
「見て分かるさぁ。少し前に言っていた、
そういう意味で好きかって聞かれたらそうじゃないって話、
今も同じかい?」
「それは……」
芳さん、鋭い。
自分でさえもさっき気付いたばかりで、
本当にそうなのか分からないでいるのに、
さっき会った一瞬の出来事で
あたしの気持ちの変化に気付いたなんて。