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目を開けると、そこはもう現代ではなかった。
教室とは違う喧噪が入り乱れている。
あたしはもう、肩で息をしていなかった。
原っぱに、ただ茫然と突っ立っている。
ぼうっとする頭で一個一個考えていく。
えっと、ここは暁斉の時代で、
あたしは着物を着ていて、それで今は戦が始まって……。
「いっ……!」
頬に鋭い痛みを感じた。
頬を押さえてぬるっとしたものが感触として残る。
恐る恐るその手を広げてみると、赤が広がっていた。
瞬時に顔が青ざめていくのが分かった。
これって、血だよね?あたしの、血?
頭がくらくらする。
感じたことのない恐怖感が一気に沸き上がった。
これは、そう。殺気。
どうしようもないくらいの恐怖で足がすくむ。
気付くとあたしの傍に三人、男の人が立っていた。
みんな青い鎧を着ていた。
「なんだ、この女」
「いいからみんな殺しちまえ」
「そうだな。敵はみんな、皆殺しだ」
ぞくりと背筋が凍った。
ぺたんと、その場に座り込んでしまう。
ああ、こんなところで死ぬのか。
死なんてこんなに身近にあるものだと思っていなかったから戸惑う。
それでも死にかけている今、こんなにも冷静なものなのか。
さすがはアイスドール。
こんな生死が混沌としている時代でも悲鳴一つ上げないなんて。
「おい、娘。何を笑っている?」
気付けばあたしは、ゆるゆると口角を上げていた。
どうして笑うかなんてあたしにも分からない。
アイスドールのあたしが笑っている。それはとても珍しいこと。
死ぬかもしれないと悟ると、人は笑うのだろうか。
「もういい、やっちまえ」
「恨むなら、信長を恨めよ」
キラリと、刀が振り上げられる。
日の光に反射して刀の銀が煌めく。
その様が美しいとさえ思えた。
ああ、死ぬのね。
死ぬのって、痛いのかしら。
苦しいのかしら。
ごめんね、お父さん、お兄ちゃん、仁。
あたし、今ここで、死んで―。