まずい・・・。


やっちゃった。


これって、どう考えてもまずいよね?


だってこの人、暁斉のこと好きなんじゃ・・・。


だからここまで訪ねてきたんだよね??


そういうことだよね??


だったらまずいじゃない!!


自分の好きな男のところに、
こんな見ず知らずの正体不明の女がいたら。


もしも仁の家にこの女の人がいたら、
あたしだってそりゃあ不機嫌にもなるはずだ。


相当やばい状況じゃないの!!



「やば・・・」


「・・・貴女は・・・」



あたしと女の人が向き合う。


顔が見れずに俯くあたしの視界には
綺麗な着物。



もしかしてこの人、偉い人??


さっき則暁くんも“姫”って・・・。



「姫様!!」



慌てた様子で駆け寄ってきた則暁くん。


あたしはそこでやっと顔を上げられた。



「うわ・・・」



つい、そんな声が洩れてしまった。


だって、この人・・・。



(綺麗・・・)



艶々の髪を束ねている女性。


顔が小さくて、ぱっちり開けられた瞳。


あたしよりも少し背は低いけれど、
スタイルは抜群な女の人。



豪華な着物で着飾ったその人は
あたしをじっと見つめていた。


「あ・・・・」


「則暁さん。この方はどこの出の者なんですか?」


「はっ。異国の地の姫君かと思われます」


「そんな方がどうしてここに??」


「倒れられていたところを暁斉様が助けられた
 のでございます」



女の人の、はきはきした物言いに動じることもせず、
則暁くんは淡々と答えた。


「そのお方、名を春日由紀と名乗られました」


「由紀・・・??」


「はい」


女の人はあたしを一瞥すると、
則暁くんに向けて続けた。


「あのお人はどんな方にもお優しいのね。
 私だけではなく、どんな人にも・・・」