時間の経つのも忘れていた。

 月の位置が変わるのも気ずかずに……。

『あっ、充電切れそうだよ』

「そっか、ごめんね……長く話しちゃったね」

 声のトーンが無意識に小さくなる。

『うぅ~~自己嫌悪……バカな携帯でごめんな』

「あはは!いいよ~!」

『ありがとな…マジで…嬉しかった』

 胸の奥をまた、掴まれた。

 瞳を閉じればすぐ隣に居るような錯覚。



 この夜……。

 バーチャルな彼は、一人の人間として産声をあげた。