「ありゃ?否定しないってことは、そんな夢を見たわけだ」
「…………ッ」
あたしは頷かなかった。
頷きたくなかった。
あれが…
あの幸せがもう手に入らないなんて、認めたくはない。
あたしの小さな小さな抵抗……。
「まあ人生いろいろあるよねー」
いきなり瑞希が軽く、そりゃもう空気より軽くそう言った。
「……へぃ?」
そのあまりにも軽く突拍子のない言葉に、さすがのあたしも間抜け過ぎる声を発した。
しかし瑞希は気にも留めず。
「いつもアホ子ちゃんやってる榊千早にもいろいろあるわけですね」
「それはけなしているのでしょうか瑞希さん…?」
「ビミョーなとこですね。」
「そこは否定して欲しかったな千早さんちょっと…うっく…悲しいっす…」
口元を抑えて項垂れると、瑞希は「あはは」と軽快に笑った。
「ま、ちーちゃんに何があったか俺は知んないけどさ」
瑞希は言いながら立ち上がる。
「バカ話やってちょっとでもちーちゃんの気が晴れるなら、
…俺は協力するし」
言ってから、瑞希は「あー」と首を捻った。