…――夢を見た。


とても幸せな夢を見た。












「…――ちゃん」


「…ちゃん」





「ちーちゃんっ!!!!」




瑞希の呼び掛けに、あたしは夢から現実へと引き戻された。


「…………っ」

「ちーちゃん、怖い夢でも見た?」

「…にゃ?」

「涙出てる」


瑞希が自分の目を指差して言う。

あたしは未だ夢と現実の境界でうろうろしながら、自分の頬を触った。






そして一気に目が覚めた。





「おぅ!!!?泣いてる!!!?あたし泣いてる!!!?なんで!!!?」

「いや俺に聞かれてもわかりかねますね。」


瑞希がにへらーっと片眉を困ったように下げて、当然のことを口にする。

だがしかし!!

あたしもわからない!!


なんで泣いてるんだい!!!?


「うーむ…怖い夢見たからとか?」

「そんな憶えない!!」

「じゃあ切ない夢見たから!」

「そんな……ッ!!」


“そんな夢見てない”


そう言おうとして、あたしは黙り込んだ。




……見たかもしれない。




でもそれは、切ない夢なんかじゃなく、幸せな夢で――…




…――幸せだけど、今はもう手に入らないもの。