直後、カイトの拳が後ろに引かれ。

いつの間に掴んだのか葵の胸倉をグッと引き寄せ、


葵の頬に握り締めたそれを喰い込ませた。


鈍い音が響く。

葵がフローリングに倒れ込む。

派手な音が鼓膜を揺らした。


それは全て一瞬の出来事で。

あたしはカイトを止めることもできずに、ただ立ち竦むしかなかった。


カイトは肩で息をしつつ、倒れ込んだ葵の胸倉をもう一度掴んで引っ張る。


「……あんたは悩んだかもしれない。
…それなりの理由があんのかもしんねェ。

…けどな…守るっつって、最後に傷をつけてんじゃねェよッ!!

俺の言ってることは綺麗事かもしんねェけど、でも俺はテメェを一発殴ンねェと気が済まなかったんだよ。

あぁ、わかってるよ。
俺はテメェじゃねェからこんなことが言えるんだっつーことくらい。

けど言わせろ――…












…――守りたいくらい大切なヤツなら、最後まで全力で守れよ」










カイトは言い切り、荒い息を吐きながら葵から手を離した。


……嗚呼、そう言うことか。


…カイトが怒っていたのは、あたしが葵を抱き締めたからじゃなくて、そういうことだったのか。