…なんて思いながら、あたしは心の中で、小町さんの言葉を繰り返していた。


“逃げ回ってても、結局は悪い方向にしか転がらない”


…本当のところ、そうなんだと思う。

あたしも、今抱えている問題から、いつまでも目を逸らしてちゃいけないんだ。


「…まぁ、そんな感じで、やっと仲が良くなってきたから、そろそろ逃げ場として残してたこの部屋を引き払わなきゃーって思ってたところへ…

…あなたたちが転がり込んできたわけですが…

……千早ちゃん、どうするの?」


小町さんが、あたしの顔を覗き込むようにして首を傾ける。

あたしは、なんて答えていいのかわからない。

口を開き掛けては閉じ、を繰り返していると、不意に姫華がテーブルを叩いた。


バンッ!


乾いた音が、静かだった部屋に響き渡った。


「いつまでもウジウジしてんじゃないの!
あなたね、みんなを巻き込んでるってことわかってんの!?

今日だって、あなたが学校休むってこと、お姉ちゃんと私がバレないように電話してあげたんだから!

でもね、私もお姉ちゃんも関係ないの!
あなたの問題にどれだけの人が迷惑かかってると思ってるの!?

美山さんも東野くんも、学校抜け出して、戻ってきてから先生に怒られてたの、知ってる!?

一ノ瀬くんだって……いつまで束縛してる気なの!?
あなたの勝手なエゴ!ワガママ!自己中な考えに、いつまで付き合わせるつもり!?

…現実を見てよ!!

みんなが優しいのだって、今の内なんだから!!」


全てを吐き出すように、姫華は怒鳴った。

怒りで上下する姫華の肩に、小町さんが手を置いて“座りなさい”と促す。

あたしはどうすることもできずに、ただ、固まっていた。


ズシリ…と。

姫華の言葉が重くのしかかる。


それは、姫華の言葉が、もっともの正論だったからだ。


“わかってる”と言おうとした。

けれど、やめた。