呆れを通り越してなんだか微笑ましくもなってくる。

頬が緩むあたしに気づき、小町さんが「話しを戻します!」と宣言して、紅茶をズズッと啜った。


「…で、今みたいに喧嘩するようになるまで、ま、いろいろあったわけよ。

もちろん、姫は私のこと最初は“お姉ちゃん”なんて呼んでくれないし?
“あなた”とか“そこの人”とか、ホント他人だもん!

私も姫のことは名前で呼ばなかったんだけどね。

……けどね、このままじゃダメだって思ったのよ。


……2人の涙見たらさ…」



小町さんの表情が、穏やかで、少しだけ寂しげになる。

隣の姫華も、俯いてカップを見つめている。


「…お父さんとお母さんが、泣いてるわけよ。二人して。

最初はズルイと思った。
泣けば私たちが納得するとでも思ってるのかって、反抗的な考えしか浮かばなかった。

でも、違うんだよね。
そうじゃない。

二人は、すっごい愛し合ってるんだって、同時に思った。

変わらなきゃいけないのは、どっち?…って、そんな疑問が浮かんだの。

答えは、間違いなく、私たちの方だった。

いつまでも駄々こねてて、逃げ回ってても、結局は悪い方向にしか転がらないのよ。


…だから、私は姫のことを名前で呼ぶようになったの」


「最初は返事もしてもらえなかったけど」と苦笑いを浮かべる小町さん。

すると、隣で黙っていた姫華が、そっぽを向いたまま。


「…私だってわかってたもの…2人のことも、お姉ちゃんの考えも……

…だから今ちゃんと“お姉ちゃん”って呼んでるんじゃないの!」

「へぇふぅんほぉ……なぁに?強制的に呼ばされてるとでも思ってるわけー?」

「べっつにー」

「“お姉様”と呼ばせるわよ。」

「ぜひ“お姉ちゃん”の方向で!!(切実)」




……上下関係がよくできてて感心するよ…。