「…おいおい。なんだよお前等…陰気臭い顔して…」


夏休みは過ぎるのが早い。

もう8月も終わりに近づいた頃の登校日。

教室には疎らに生徒が座っていて、思い思いに雑談を楽しんでいる。

で、あたしは教室の隅の机に座って、何度もため息をついていた。

前の席に座る瑞希も、然り。

花梨の姿はない。


「…あ、真中先生。今日もいい天気ですねぇ…。死にたくなるくらい。」

「なっちょっ…榊!?どうしたお前!?目が…目が死んだ魚になってるぞ!?」

「気のせいじゃないでしょうか…うふふ…」

「こっ怖いなその笑い方…どうしたんだよ最近。こっちの調子が狂うってんだ」


生気のまったくないあたしを、真中先生はホントに心配している様子。

何度も髪の毛を掻き上げて、困ったような表情を浮かべる。

髪の毛は、暑いからなのかアップにしてる。


「…あ、ホラ、あれだ!何か面白いことやったら気分上々!にならないか!?」

「…布団が吹っ飛んだ…」

「寒っ!!果てしなく寒いっつの!!ここは北極か!!」


どこまでも元気のないあたし。

真中氏は痺れを切らし、ため息をついて。


「…何かあったのか?」


あたしは何も答えない。

それを肯定と受け取ったのか、先生は腕組してから言う。


「美山も体調が悪いとか言って休みっぱなしだしなぁ…

いっつもお前とコントやってる…なんだっけ…東野?他クラスだからよく知らないけど…コイツも元気ないし…」


あたしの目の前に座る瑞希を見下ろしながら、先生は肩を落とす。

それからあたしへと視線を戻し、「よしっ」と。


「よしっわかった。私が話しを聞いてやる。解決まではいかないかもしれんが、何も言わないよりマシだろ」

「…え……いいんですか…」

「いいも何も、私の生徒が困ってるのに、何もしないってのは教師として、人としてダメだろー」