まともに、二人と顔が合わせられないと思った。
ホントは今日も登校日だけど、休もうと思う。
うん。
…なのに!
『うぉいコラ榊!学校来んかい!!』
「だから今日は無理なんすよぉ!」
『理由を言え理由をー!!」
「人生の壁にぶち当たりました!」
『お前にはまだ早い!!』
「ちょっww先生それないっすww」
『その“ww”を使うのやめろぉ!そして来いコラァアア!!』
「どぅあからぁ…!」
半べそで理由を見つけようと奮闘するあたしの手から、誰かが携帯を抜き取った。
流れ的に、そちらに顔を向けたあたしは、ギュインッ!と顔を背けた。
「すみません。今日は家族で出かける予定があるんです。登校日だと知らなかったもので」
果てしなく大人口調で、さらっと高度な嘘をつくのは、言うまでもなく眼鏡野郎である!!
携帯から、真中氏の戸惑った声が聞こえてくる。
『あ、そうなんですか?いえいえこちらこそすみません!』
「いえ、本当に申し訳ありません。次からは、千早にきちんと登校日を伝えるよう言っておきますので」
てめっww何様だコンニャロッww
『はい、よろしくお願いします。では、失礼します』
携帯の通話が切れる音。
っていうか、真中氏のあんな丁寧かつ綺麗な声は聞いたことないんだがww
(“ww”を使うなと言われて逆に使いたくなっている人)
携帯をパチンと閉じ、あたしに放り投げる眼鏡野郎、伊吹。
あたしは慌てて携帯をキャッチする。
そして手に取ったそれを見つめ、ソロリと伊吹に視線を向ける。
伊吹は横目でこちらを見ていて、あたしは素早く目を逸らす。
気まずい雰囲気が漂うリビングに、その時。
「おっはよーござりまっす!!茉莉さんの起床のお時間ですよ!!」
バンッ!とドアが開いたと同時に、起き抜けとは思えないハイテンションな声が飛んできた。
朝からご機嫌な茉莉が羨ましス…。