サックスパートに来てくれた2人は、他の楽器は吹かずに早めに帰ってしまった。

ヒマになっちゃったなぁ。

そうだ。

優美に会いに行こう。

私は楽器を安全な場所に置き、優美が所属するクラリネットパートへ向かった。

クラリネットパートには、3年生が2人いるけれど、その2人は2ndと3rdで、優美が1stを担当している。

そのせいか、優美はクラリネットパートの先輩とは、人間関係があまりうまく行ってないみたい。

でも、優美は誰よりもクラリネットが上手なんだ。

顧問の李奈先生が、優美に1stを任せるのも当然だよね。

「どう?1年生たくさん来てくれた?」

「いっぱい来てくれた!」

「よかったね。」

優美と話していると、心がホッとする。

いつも私のことを考えてくれているし、何よりおおらかで頼りになる。

それに比べて、私は気が弱くて、自分の思っていることをヒトに伝えるのが苦手なタイプだ。

優美は、私にとって、なくてはならない存在なんだ。

「あの、ちょっといいですか?」

優美と話していると、1人の男の子が私に話しかけてきた。

1年生なのに背が高くて、とてもスタイルが良い。

肌が白くて綺麗。

目は細くて、鼻はすこし高め。

彼を一目見てから、よくわからないけど彼から目が離せない。

「お話中にすみません。僕は1年1組の永井奏太(ながい そうた)です。サックスを吹かせていただけますか?」

「サックスパート、留守にしててごめんね?じゃあ、行こう。」

「優美、また後でね。」

「うん。」

優美が、私と奏太くんを見て、ニヤリと笑った気がした。

なんでだろう?

気になったけれど、今は奏太くんの楽器体験に集中することにした。

後から優美に聞いてみよう。

私は、奏太くんをサックスパートの場所に連れて行き、好きな物を選ばせた。

「テナーサックスがいいです。」

「じゃあ、早速吹いてみよう。」

そうは言ったものの、アルトサックスを選ばない子は珍しいと思う。