"キーンコーンカーンコーン"
6時間目の授業が終わった。
ホームルームが終われば、やっと部活に行ける。
私は橘音(きつおん)中学校の2年生。
名前は菅野奏愛(かんの かなあ)。
部活は吹奏楽部に入っている。
教室から、部室になっている音楽室までの道のりを1人で歩き出す。
「さみしい」
そんな感情が頭に浮かんだ。
いつものことなのに。
こんな時、一緒に部室まで行ける友達がいたらいいのに。
生マジメで正義感が強い性格のせいか、友達が極端に少ない。
同じクラスの部活仲間も、特別仲が悪いわけではないけれど、だからと言って仲が良いわけでもない。
虚しくなるけれど、私はその場限りで適当にくっつく友達はいらない。
うれしいことも、悲しいことも、分けあえるようなヒトしか、私のなかでは友達じゃないから。
だから、これでいいのかもしれない。
そう思った。
そういえば、今日は新一年生の部活体験の日だった。
今日から一週間、入学してきた一年生が、自分の入りたい部活動を体験する。
吹部では、色々な楽器を吹かせてみて、担当楽器を決める。
「奏愛!」
私の名前を呼んだのは、親友の大橋優美(おおはしゆうみ)だ。
「奏愛、遅いよ!また1人でのんびり歩ってたんでしょ?」
「ごめん、考えごとしてて。」
「じゃあ、早くサックスパートの準備して?もうすぐ1年生来ちゃうよ?」
「はーい。」
私は、吹部でアルトサックスを担当している。
部員数が少な過ぎて、サックスパートでは、テナーサックスとバリトンサックスがいないという非常事態だ。
だから、1年生にたくさん入部して欲しいと思っている。
「よし、準備完了!」
すべての楽器のセッティングが整い、1年生がやってきた。
サックスパートには、2人の女の子が体験に来てくれた。
遥香ちゃんと由依ちゃんだ。
2人とも、入部したら、サックスパートに所属したいと言ってくれた。
入部してくれるといいなぁ。