戸矢の両サイドに立った、茶髪で細身の長身で爽やかそうな男と、
少し長めの柔らかそうで、繊細さを感じる艶艶とした茶髪の冷たい印象を与える無表情の男が並んだ。
そのまた両サイドには、
高校生とは言い難い…
学ランを着ているからきっと中坊だろう少年が2人。
ただ2人とも目を惹く顔立ちをしていて、
1人は濡れたような黒髪と白い肌、真っ赤な唇。
着崩された学ランの襟元からは何故か色気が漂っている。
もう1人はミルクティー色の甘い髪色でこちらを甘やかすような愛くるしささえ感じさせる可愛らしい顔立ちをした子で、同じように着崩して学ランを着ていた。
ザッと見ただけでもパンサーは細身の奴等ばかりだ。
そして何故か皆、制服を着用している。
今思えば戸矢も暗闇と薄紫のカーディガンを着ていたこととネクタイをしていなかったことで分からなかったが、
青と黒のチェックのネクタイ、青みがかった黒のズボン。
中央正鈴高校の男子用制服だ。
戸矢の両サイドに立った2人が正鈴の制服を真面に着ていた為分かった。
同じ高校にこんな印象的な奴等居たんだな…。
その他にもチラホラと、
片手に収まる人数が正鈴の制服を大胆に着崩して着ていた。
マジで、居るんだよな?うちの高校に…
正鈴高校は全校生徒数が多く、それに合わせて校舎も多い為卒業するまで顔を知らなかった奴なんてザラに居るらしい。
でも、南から通学している奴等が居るとは意外で…
制服を凝視しながら
誰かからパチったとか、ないよな…?
「あ、制服パチったとかやないで?
うち今んとこ8人正鈴通っとるよ〜」
表情を読まれたのか、戸矢がクスクス笑いながら教えてくれた。
「…仲間、連れて来てたんだな」
「さすがに総長1人で行かすわけにもいきませんからね」
そこで冷たそうな顔立ちの人物が口を開く。
俺がそっちに視線を向けると
「申し遅れました。三上英人です」
淡々と自己紹介をする三上は戸矢と真逆の性格に見える。
実際真逆らしい
「主要のみ、自己紹介させて頂きますね」
続けざまに三上はそう言って、長身の爽やかそうな男を見る。
男はそれを受け取り
「俺は簗田健太。よろしく」
爽やかに、温もりを感じる笑みを浮かべた。
「藤崎朔夜。よろしくお願いします」
まだ少年の色気を漂わせ、濡れたような黒髪の子は毒のような甘い笑顔で真っ赤な唇を動かし言った。
後ろで、何人倒れただろう…
「浦田真守ですっ!よろしくお願いします!」
可愛らしい顔で、大輪の花を咲かせたかのようにほころび、こちらの毒気が根刮ぎ削がれてしまった。
彼等には、全くの悪気が無いのだろう。でも、
後ろでまた、何人倒れただろう………
数えるのも恐ろしい
その後正鈴高校に通っている者も含め数人自己紹介をしてもらった。
「ざっとこんな感じやな。
高校生は正鈴に通てる奴等以外皆南紅高校ちゅうとこに通てるで」
そこで俺にしっかり目を合わせる
「ま、なんかあったら呼んでぇな」
「分かった」
「ほな俺らは帰るさかい」
よっと、
と言ってゴミ箱の上から飛び降り、元の場所に戻す。
その間に他のパンサーの面子はトボトボと帰り出していた。
歩いて来たのか
戸矢も「じゃ」と言って踵を返して行った
その背中に、
「ありがとな、戸矢」
と言う。
「…大悟でええよ〜」
戸矢から…、大悟からそう返事が返ってきた。
「分かった。
ありがとな、大悟」
進めたいた足を止め、顔だけで後ろを振り返り
「おー」
と、ヘラヘラした顔じゃなく、端整な顔て年相応の笑顔を浮かべ笑った。
パンサーの背中が南に入る夜闇にへと向かい、溶け込む。
南町へはここから入るか、山を越えるか県を跨ぎ海から行くしか方法がない。
そう考えるとここが一番楽して入れる唯一の道。
何故か空き家となっている民家は昼間でも人が近寄りがたり雰囲気を醸し出している。
この先がどうなっているか、俺は知らない。
南町がどんな町か、俺は知らない。
こんな空き家が続くのか、
それともこの道のずっと先を抜けると明るい町に出るのか…
あの背中はもう見えない
後ろを振り返り、西のチームにたずねる
「南って、どんな町なんだ?」
答えてくれた西独の総長は、申し訳なさそうに
「俺らは南町に入る前に潰されちまったんで、
南町は見れてないんですよ…」
そう言って自嘲気味に笑った。
「すまねぇな、ありがとう」
南の方角へ向き直る。
南町に興味を持った。
今まで思ったことのなかった
『南町に行ってみたい』
という感情が一気に溢れてくる。
今、行ってみても良かった。
南町に。
でも、何故か、
入る事を何かが許さない。
まるで部外者が立ち入るのを拒むかのように…
「…まだ今は入れない、ということか。」
南へと続くこの薄暗い道がなぜか大悟、いいや、彼だけじゃない。
パンサーに重なって見えて仕方なかった。
入れるように自分が整えたのに入らせないこの空気とかが特に…。
思わず苦笑いを浮かべる
「帰ろうか」
後ろを向いた時
俺はもう総長の顔をしていた。