パタパタと女生徒が去って行ってから、「だりぃ」と何の感動もなく吐き捨てる隣の男。その偽仮面、一枚500円で売ってくれ。

「『ちぃ様』って、俺、散歩なんかしないんだけど」

不機嫌にそう言ってから、貰ったプレゼントらしきものをクシャっとポケットに詰め込んだ。それにしても、ちぃ様は某有名人の呼び名と被るのがお気に召さないらしい。


「灰原」

あたしは、無意識にそう口にしていた。

一瞬で、横の男は不愉快そうに眉を曲げる。


「千景」


あたしは何気なくその名を呼んだ。魔王の真名を手に入れた気分。