灰原の顔が何故か赤く染まる。理由は何度もいうようだけど知らない。あたしはまた少し笑う。そんな顔なら、嫌じゃない。
「…あなたとのキスはクラクラするからもうごめんです」
あの不意打ちのキス自体は嫌じゃなかったあたしは既に魔力の罠に引っかかってるんじゃないかと。考えるのも面倒くさいですが。
あたしは立ち尽くす灰原の横を通り過ぎてさっさと靴を履き替える。もう振り向きもせずそのまま校舎を出た。
だから――――
灰原が頬を赤く染めて「…っと、まじ、反則でしょ」と小さく呟いた事は知らない。後に、灰原のその憂いを帯びた姿が隠れファンのシャッターチャンスに惜しげもなく晒され、高額で売買された事なんて知る由もない。
第三章-終わり-