いや、口調、変わってます。

一瞬、そのアンバランスな笑顔にボケッとなった女子達。

も、束の間、まるで今の言葉は無かった事のように灰原の腕にさり気なく回される細い手首。あたしが隣にいた事なんて嘘みたいにその場はまた別次元に見える。


「灰原さんと一緒にいたいのにー」


その笑顔に絆されて灰原の言葉にはダメージを受けていないのか、まだ粘るその姿は逆に尊敬出来る。あたしなら、あの微笑の奥に隠された人間凶器が恐ろしくて引く。
灰原がまた一瞬だけ目元をピクリとさせた。これはいかんよ。


「それに、間宮さん?だったかな?構わないよね?」


あたしを振り返って、灰原に背を向けたその顔は『テメェ、さっさと気ぃ使えよゴラ』と如実に物語っている。語尾が疑問文じゃなく、断定に聞こえたのはきっと気のせいじゃない。


「それに、あなたがちぃ様の隣って」


嘲笑を含んだ声で、彼女達は顔を見合わせてあたしを上から下まで眺めた。