立ち止まる、足。あたしも立ち尽くして、並木道の真ん中、向かい合う。太陽の日差しを背中に受けてすごい後光の灰原。眩し過ぎる。貴様は観音様か。いや、違うだろ。その対極に位置する筈だろ。


「あのさ、」


落ちた低い声がいつもより少しトーンが優しくて、何だか戸惑う。


「なんですか」


あたしも、少し語尾を呑んだ。


「この前みたいに、」


灰原の表情が優しい。訳が分からない。


「名前で呼べば」


そう言ったあと、灰原は綺麗な奥二重の瞳をスと細めて照れたように横を向いた。