灰原千景は少し困ったように形良いシャープな眉を曲げる。

「一緒に…」

そこで言葉を止めるからあたしは見上げた。夕日に照らされたその横顔は夕焼けに染まったように、赤い。

「あ、顔赤いですよ」

「…うるさ」

灰原千景はハァと溜め息を吐いて、長い指先で顔を覆う。

「一緒に、なんですか」

続きは、と首を捻るあたしに、灰原は視線を逸らす。キッと口元を一文字に結んで、



「…帰れないね」





呟いたのはぶっきらぼうな、低い声。そのアンバランスさに吹き出してしまいそうになる。