「それに時々、左足さり気なさを装ってトントンと指先で弾いてみてたりしたでしょう」
「それは、装ってたんじゃない。本人も気付いてない位さり気ないんだよ。ド阿呆。」
「あなたは多分ヒゲが似合いますね」
「意味分かんないんだけど」
いや、こんな長時間見つめ合う事が無かったもので。綺麗な顔立ちですが、もう少しワイルドにしてもばっちこいじゃないかと思いつつ。
「変なやつ」
ハァとため息をついて、灰原千景は髪をクシャリと掻いた。形状記憶のスキルを持たない細い髪はサラサラと風に靡く。
「君って規格外」
クっと上がった薄い口元がまた低い美声を紡ぎ出した。