「ねえ、そこのブスちゃん。その本って面白い?」


確かそう言ったと思う。記憶違いで無ければ、初対面でのこの失礼さによく理性が保ったものだ。

「面白いですよ。目の前のこの足さえ邪魔しなければパーフェクトです」


あたしは目の前の男の足をシッシッと手で払いのける仕草をして、淡々と答えた。


「君がどけば」


俺様男とはお話にならない。その前におまえがそのモラルのない行動を慎め。ああ、だけど、言い争いをする気力などどこにもない。確かにあたしは、切れ長の一重瞼のお陰で目つきが悪いし、美人と呼べる人種じゃない。そう考えれば、『ブス』だなんて気に留める単語でもないし。この足が不愉快なら、この男の言うとおり移動したらいいんだ。


あたしは黙って席を立った。